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特集A扶桑社版めぐる教科書採択大詰め
県教育委員会は、来春開校する県立中高一貫校と、県立高校で使用する教科書を、文部科学省に報告する期限の8月15日までに採択する。県教委は昨夏、東京都教委と並び、公立養護学校などの一部で、「新しい歴史教科書をつくる会」主導の扶桑社版中学歴史教科書を採択、全国的に論議を巻き起こした。今年は一般の公立中学校である中高一貫校での採否であり、もし採択されれば全国初のケースになるだけに、県教委の決定は昨年以上に注目を集めている。すでに教科書選定資料の作成を終え、採択の委員会を残すだけ。同教科書推進派、反対派双方の動きが活発化する中、「愛媛の教科書採択」は大詰めを迎えている。
昨夏、全国の公立小中学校で一斉に教科書採択が行われた。愛媛県教委と都教委が扶桑社版中学歴史教科書を採択したことに対し、激しい抗議活動が展開され、韓国と中国からは教科書内容の修正要求が起こり、国内外に大きな波紋を広げた。
●双方の思惑
あれから1年。今夏、全国の公立中学校で採択が行われるのは、来春開校する本県の県立中高一貫校(今治東、松山西、、宇和島南)の3校だけ。そのため、「愛媛の3校」の採択動向に全国から高い関心が集まっている。
もし中高一貫校で扶桑社版が採択された場合、推進、反対派双方とも、「昨夏以上に大きな意味合いを持つ」との認識で一致している。昨年は県立養護学校とろう学校の一部で採択されたとはいえ、人数ではわずか5人。一貫校は一校160人、3校で480人であり、数字的に大きく異なる。
推進運動の中核を担う藤岡信勝東京大学教授は総合誌の論文で「(中高一貫校で採択されれば)擁護諸学校以外の公立学校では全国初の採択実績で、公立中学校で市民権を得る」「全国的に一般公立校で採択される突破口となる可能性がある」などとしており、そのため採択を強く期待する。
一方、扶桑社版採択に反対する韓国の「日本の教科書を正す運動本部」の張信政策局長は「もし扶桑社版が採択されれば、せっかくワールドカップで盛り上がった日韓の友好ムードに水を差すことになる」と危惧する。
逆に一貫校で採択されなかった場合は、次の全国的な公立中学校の採択は2005年度となる。このため、ある推進団体役員は「時間とともに教科書問題への関心が低下し、運動自体が尻すぼみになる」可能性を指摘する。また、反対派も同様の理由から採択阻止に向け、世論を喚起する活動を行っている。
●非公開審議
中高一貫校の教科書採択審議は、現場教員や市町村教育長による「教科用図書選定審議会」が6月に2回の会合を開き、選定資料を作成した。全教科73冊(うち歴史教科書は昨年と同じ8冊)の教科書について多面的に検討した選定資料は、今月15日の定例県教育委員会で6人の県教育委員に渡された。後は委員が選定資料を参考に教科書を選ぶ作業を残すだけ。
公共についても、全教科約1300冊の教科書を検討する「採択委員会」がすでに開かれ、作業は最終段階を迎えている。
昨年は8月8日の定例教育委員会で採択されており、文科省への報告期限を考慮すれば、今年も採択は8月上旬の定例委員会で行われる見通し。県教委は「委員会の日程は調整中。決まり次第、県のホームページなどに掲示する」としている。
「選定審議会」「採択委員会」の審議は、教科書会社などからの教育委員への働きかけを避けるという理由で、日程、審議内容、構成メンバーなど、すべて非公開。採択当日の教育委員会の公開、非公開は教育委員が決定するが、昨年の採択は非公開だった。
非公開の場合でも、情報公開請求があれば、後日議事録は公開される。昨年公開された議事録では、発言した個人名は伏せられていた。しかし今年1月、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」(地教行法)の改正で教育委員会は「原則公開」となったため、今年は発言者名も公表されるという。
(2002/07/21 『愛媛新聞』より)