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「採択の波紋/県立中に扶桑社教科書」


E2002/08/30 発言に社民が反発/支援勢力図変化は必至/知事選への影響

 「扶桑社版がベスト」「(教科書採択は)県政最大の課題」…加戸守行知事は昨年来、こうした見解を述べてきた。

 昨年に続き扶桑社版を採択した今回の教育委員会審議では、一連の発言が委員の判断に影響を与えたかどうかが大きな注目点だった。というのは、教育基本法10条が「教育は不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われる」と規定。知事の発言が審議に影響を与えたとすれば、同法違反の恐れがあるからだ。

 昨夏の扶桑社版採択前に、知事は教育委員でもある教育長に「扶桑社がベスト」と伝え、「(県教委の決定に影響を)与えたかもしれない」と認めた。この発言は県政与党の社民党県連からも「教育基本法に反する」と抗議を受け、反対派市民による訴訟にも発展。

 にもかかわらず知事は今年5月にも、講演で教科書採択を「県政最大の課題」と発言、新たな波紋を呼んだ。後に「採択の適否ではなく、採択結果によっては、国際交流関係で支障が生じることを想定した発言」と釈明したが、反対派は「扶桑社版採択にかける知事の信念の強さが垣間見える」と危機感を強めた。

 では、当事者である教育委員はどうとらえたのか。知事発言が今年の採択に与えた影響について「一切ない。われわれの責任と権限でやっている」(吉野内直光教育長)、「知事の意思表示は報道で知っているが、そのために扶桑社版に決めたということはない」(井関和彦教育委員長)と一様に否定する。

 しかし知事の影響については、推進派が「採択は加戸知事の発言などのたまもの」との見解を示しており、知事自身の釈明や教育委員の見解とは食い違いを見せた。

 教科書採択など教育委員会の独自性は法で保障されている。しかし、現在の教育委員会制度は、委員がすべて任命される「任命制」。この制度下では、首長の意向を酌まざるをえない面があるとの見方は十分な説得力を持つ。

 教育委員の任命制に関して、採択後の20日の定例会見で加戸知事は「首長が交代しても、委員は(4年間の任期を終えてから)1人、1人と変わるので、教育行政が急カーブで動かない。教育の安定性、中立性を保障する優れた制度」とする。

 しかし加戸県政1期目も終盤の現在、現教育委員6人はすべて知事自身の任命者。知事は「知事の考え方、目指す教育の方向を受けて動く人が勢ぞろいする。確かに公選制より任命制の方が、首長と教育委員会の心理的な連来館系は大きい」と一体感も強調して見せた。

 もう1つの焦点が知事選出馬への影響。加戸知事は教科書採択への海外の反応によっては、自信が責任をとるとのスタンスをとってきた。しかし現在、中韓などの反応は「不快感の表明はあったが、予想の範囲内」(知事)。与党内でも「教科書問題は再選出馬への障害ではなくなった」(自民党県連幹部)との見方が大勢になった。

 とはいえ選挙戦を想定した場合、与党である社民党県連は扶桑社版反対の立場。歴史認識の相違から知事の「扶桑社版がベスト」とする姿勢には反発しており、党員レベルでは影響は必至。扶桑社版への県民の議論がある中、知事支援の勢力図が少なからず変わることは避けられそうにない。

(歴史教科書問題取材班)=おわり