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「採択の波紋/県立中に扶桑社教科書」


C2002/08/28 本質論争は法廷へ/両派の運動全国に発信/賛否の今後

 採択率0.04%。扶桑社版歴史教科書は、昨年の全国公私立中学一斉採択で敗北を喫した。それから1年。扶桑社版をめぐる推進、反対双方の運動は全国的には次第に沈静化。しかし唯一、愛媛だけは例外だった。

 来春開校する中高一貫校は愛媛以外に8県11校ある。そこでは愛媛と同様に今年、教科書採択審議が行われている。だが、他県ではこれまで何の騒動もなかった。

 昨年、加戸知事が県教育長に「扶桑社版がベスト」との意向を伝え、数少ない扶桑社版採択権になったことは、今年、双方の運動が激化するには十分な背景だった。

 採択日までに県内外から県教委に送られたファクス、メールは6371通。うち、賛成は4749通を占めた。推進派は全国組織の後押しで、愛媛に焦点を絞った運動を展開する。

 そして運命の15日。県教委は全会一致で昨年と同じ決定を下した。

 推進派の宮川康・県教科書改善連絡協議会長は採択後の記者会見で「欣快(きんかい)に値する。約41万署名を胸に、日本人としての誇りと自存を取り戻す一歩を踏み出す」と高らかに勝利宣言した。全国組織「新しい歴史教科書をつくる会」は扶桑社版の多数派入りを目指し、2005年の全国一斉採択に向けた運動方針で「教科書採択方法の適正化」を揚げる。

 どうか井の藤岡信勝副会長は「教員らの評価のまま採択している現状は問題だ。教育委員会の判断で採択するよう働き掛ける。原稿の複数市町村の共同採択方式も、単位教委が採択権を持てるよう制度改正を求める。市町村合併までの過渡的措置としては、町村部は県が代行して採択するのが望ましい」と、これを機に都道府県教委の権限強化まで視野に入れる。

 さらに会員拡大、都道府県や市町村の議員や教育委員会に対して教科書問題への理解を深める運動を展開していく方針だ。

 一方採択の裏で、反対派メンバーには失望と怒りがこみ上げていた。

 採択前の5日間、反対派は県庁前に座り込み、「リレーハンスト」を決行。メンバーは反戦活動家、環境保護関係者、元教員、労働組合員…。所属団体こそ違え「この教科書だけは子どもに渡せない」との思いは共通。「右傾化する日本の最前線にしてはいけない」と、今後も多様な抗議行動を展開する予定だ。

 知事、県教委などを相手に提訴した「えひめ教科書裁判」3件の審理が今秋から本格化する。世話役の奥村悦夫さん(50)=今治市=は「法廷で教科書問題や筋の通らない採択方法の本質論を争うことが、反対運動を県内外に広める重要な意味を持つ。裁判を含めた愛媛の反対運動は、全国各地へのモデルケースとなる」と意気込む。

 しかし、反対派は一点のみ、加太を積み残した。ある労組関係者が語った「労組や生徒など組織を超えた歩調が、運動論の違いもあり、もう一つ緊密でなかった」現実を克服できるかどうか。

 3年後、教科書が全国の中学校で一斉採択される。そこへ向けた賛成・反対双方の運動は、愛媛の採択を経て新たな展開へと向かった。

(2002/08/28 『愛媛新聞』より)