愛媛の教科書問題 > 愛媛の教科書問題(4) 2005/03/31〜

◆<社説>教科書採択/公開・透明性に疑問を残した◆


 来年度から4年間、県内の中学校で使われる教科書の採択が終了した。焦点となっていた「新しい歴史教科書をつくる会」主導の扶桑社版歴史教科書は、県教育委員会が引き続き県立学校で使用することを決めたほかは、いずれの市町教委も採択しなかった。

 また同社版の公民教科書については、県教委を含め採択したところはなかった。

 その歴史観、戦争観などをめぐり同社版の教科書に対しては賛否両論があり、県内で訴訟も起きている。韓国や中国から「歴史をゆがめている」などと反発や批判が起き、外交問題にもなっている。

 こうしたなか、県内で新たな採択が広がるかどうかが注目された。2001年に県立聾、養護学校の一部、2002年には中高一貫の県立中で歴史教科書が採択された経過もあって「つくる会」側は力を入れたようだ。一部の市教委では同社版の歴史、公民教科書を支持する意見も出されたが、採択には至らなかった。

 全国では、同社版の歴史教科書を新たに採択したのは二地区だけだった。在籍者ベースの試算で採択率は前回の0.04%を上回ったものの0.44%にとどまるという。「つくる会」が目標とした10%にはほど遠い。

 これまでの県教委の採択に対し、私たちは歴史教科書の内容や採択の経緯などを踏まえ疑問を呈してきた。

 確かに、2回目の検定を通った同社版の歴史教科書は全体に穏健化したと評されており、全会一致で採択を決めた県教委も「日本に誇りと愛着を持てる」「先人を尊ぶ心が養われる」などを選定理由に挙げる。

 それでも一方で、相変わらず自国中心主義ともいうべき叙述が目立つ。戦争の反省から学ぶという姿勢は重要だ。現場教師らの意見を尊重した点も評価できる。これらを考え併せると、同社版教科書が広がらなかったのは自然な結果だろう。

 今回、重要な問題点として浮かび上がったのは、大半の教委の手続きにおいて透明性や公開の原則が損なわれたことだ。

 採択を審議した県教委と二十の市町教委のうち、審議非公開としたのは十八に及んだ。なかでも松山市教委は日程すら非公開で通した。

 その理由は「静ひつな環境で率直な意見交換を図る」ということに代表される。静ひつさは当然のことだが、外部の動きを理由に自由な意見が言えないのでは困る。住民に対して責任ある審議といえるのか、大いに疑問を残した。

 実際、公開で行われた新居浜や大洲、内子の各市町教委に混乱はなかった。「将来を託す子どもの教科書の審議はオープンに」「市民の理解こそが子どもの健全育成の基盤」という考え方はその通りだ。審議を傍聴した住民の理解も深まったに違いない。

 子どもたちにふさわしい教科書を選ぶのに必要な条件は、過程を住民の前にすべて明らかにすることではないか。

(2005/09/02 『愛媛新聞』より)