

愛媛の教科書問題 > 愛媛の教科書問題(2) 2002/08/15
◆国内外反発は必至/説明責任十分に果たせ(解説)
県教育委員会は15日、来春開校する県立中高一貫校3校の中学歴史教科書に扶桑社版を採択した。昨年の県立ろう・養護学校の一部に続く採択で、一般の公立中では全国初。それだけに推進・反対派双方の動きは昨年以上に活発化した。今後も国内外の反発があるとみられ、「愛媛の教科書問題」はさらに波紋を広げそうだ。
今年の採択論議は5月、加戸守行知事が西条市での講演で「教科書問題は県政最大の課題」と発言したことが発端。知事はこれまでも「中高一貫校ができれば、そうなる(採択される)でしょう」などと話しており、昨年の採択は、今年の一貫校への布石と見る向きは多かった。推進派、反対派とも「西条発言」に直ちに反応した。
反対派は同月、昨年の採択をめぐって知事や教育委員の提訴を決定。相次ぐ集会や質問状など、さまざまな手段で扶桑社版の問題点を訴えた。
一方、昨年は目立った動きがなかった推進派も「愛媛での採択を突破口に、2005年の全国公立中の採択につなげたい」と同月から署名活動を展開。「新しい歴史教科書をつくる会」は「愛媛問題対策本部」を設置するなど、愛媛に焦点を絞った運動を進めた。
推進派の活発な動きは、県教委にとって扶桑社版採択の後押しとなったようだ。ある教育委員は「一貫校の採択に関し約1000通の手紙とファクスが届いた。反対が多数を占めた昨年と違い、今年は賛否半々」とし、「昨年の採択が支持されている結果」と胸を張った。
採択は終わっても、教科書問題はむしろ始まり。国内外、とりわけアジア諸国からの採択撤回運動が予想される。昨年は全国一斉の教科書採択年だったため、各地で反対運動が起きた。扶桑社版は東京都教委(養護学校の一部)などでも採択されたが、今年は本県の一貫校だけ。それだけに批判、撤回運動は集中しそうだ。
昨年、激しい撤回運動が起きた韓国では、今年はサッカーのワールドカップ共催の余韻などで目立った反対運動は起きていなかった。しかし今月上旬、「愛媛で扶桑社版採択見通し」との情報が流れると、東亜日報、ハンギョレ新聞など韓国各紙が一斉に反応。潜在的には以前注目されていることをうかがわせた。
予想される反発に対し、県教育委員は今後、「なぜ扶桑社版なのか」を説明して行かねばなるまい。「教科書会社などからの影響を排し、静かな採択環境を守る」ためとはいえ、審議は非公開。また決定前に教育委員が会食し、扶桑社版について話し合ったことが明らかになるなど密室採択の印象はぬぐえない。
扶桑社版をめぐっては、その戦争観、女性観、アジア観が論議されてきた。折しも15日は、日本が戦後貫いてきた非戦・平和への思いが凝縮する終戦記念日。論議を呼んだ教科書を、全国の一般の公立中で初めて採択するという先べんをつけただけに、県教委は採択理由を十分説明する責任があろう。 (政治部・坂本敦志)