愛媛の教科書問題 > 愛媛の教科書問題(2) 2002/08/15

◆厳戒県庁で密室謀議/中高一貫校に扶桑社版採択


 扶桑社版歴史教科書が採択された終戦記念日の15日。不採択を訴え続けた反対派市民にとっても”歴史的な”敗戦の人なった。昨年の混乱を避けるため、県側の過剰なまでの警戒下で進められた非公開での決定に、詰めかけた反対派は「密室の謀議だ」と反発。一方、推進派は今後の全国各地での採択推進に向け、喜びの声をあげた。異様な雰囲気の中での採択劇の裏で、両派の思いが交錯した。

●反対派●「怒り超えて悲しい」
 「憤りを通り越し、悲しい」「教育委員の良心を信じていたが」…。扶桑社版採択の一方が、県庁前で座り込みを続ける反対派に届くと、メンバーの1人からは「背筋が凍るような恐怖感を覚えた」と失意の声が漏れた。

 反対運動を続けてきた高井弘之さん(47)=今治市=は「教育委員会に侵略戦争を反省する心があれば、戦争を美化する教科書の採択はしないはずだ」と集まった約70人と審議の行方を見守った。

 「全会一致で採択」との一方が入ったのは午後4時前。奥村悦夫さん(50)=同市=は「言うべき言葉がない。愛媛の子どもたちが、将来どのように他国の人と生きていくのか心配」と肩を落とし、「県民の声に耳を貸さない採択は、この教科書を全県、全国へ広める布石だ」と危ぐする。

 中島清延さん(57)=松山市=は「県教委が背負った罪は、歴史がやがて裁くだろう。人の命がたやすく奪われる教育を許さず、平和を願う人々と手を組み、反対運動を続けていく」と決意を新たにした。

 抗議集会では「教科書を、あなた達の思い通りには変えさせない。今回の採択に決して屈せず、異常性や違憲性を多くの人に訴えていく」と抗議声明を全員で朗読した。

 反対派は同夜、会を開き、採択で一貫校への進学意思の変更を余儀なくされた保護者の訴訟が考えられるとして、今後の対応を協議した。

●推進派●全国拡大へ足がかり/「つくる会」藤岡副会長「県教委に敬意」
 「扶桑社版歴史教科書が全国で多数派になる手がかりとして、重要な意味をも持つ」…採択後、記者会見に臨んだ「新しい歴史教科書をつくる会」副会長の藤岡信勝東京大教授(教育学)は今回の意義を明快に語った。

 採択率約0.04%。昨年全国一斉採択では辛酸をなめた。藤岡教授は、その理由を「各地の教育委員からは評価された。それが、反対派の暴力的弾圧によって採択者側が尻込みをした」と分析。2年連続で扶桑社版を採択した愛媛県教委の姿勢を「心から敬意を表する」などと褒め上げた。

 会見には、県教科書改善連絡協議会の宮川康会長、つくる会県支部の長曽我部延昭支部長も同席。宮川会長は「全国に先駆け、日本人の誇りと自尊を取り戻す一歩を踏み出すことになった。感慨で胸がいっぱいだ」と熱っぽく語った。

 同会は会見で声明を発表。この中で、韓国国会議員が14日、県教委に採択反対の要請文を送ったことに対し、「この種の内政干渉が韓国政府当局著李なされるならば、日韓両国の親善関係を損なう事態になることを警告する」と記した。