

愛媛の教科書問題 > 愛媛の教科書問題(1) 2001/08/08〜2002/08/14
◆民団愛媛本部/「つくる会」教科書不採択求め要望書提出◆
在日本大韓民国民団愛媛県地方本部の金容徳団長ら9人が県庁を訪れ、吉野内直光県教育長と井関和彦県教育委員長にあてた扶桑社版教科書を採択しないよう求める要望書を藤岡澄県教育次長へ提出した。
要望書は「子どもたちが民族差別、偏見に負けず成長するよう願う」とし、採択にあたっては▼過去の歴史を正しく理解する▼多民族、多文化共生を目指す…などの観点から扶桑社版歴史教科書を採択しないよう求めている。
(2002/08/15 『愛媛新聞』より)
愛媛県教育委員会
教 育 長 吉野内直光 殿
教育委員長 井関和彦 殿
2003年度 歴史教科書採択に関する要望書
2002年8月14日
在日本大韓民国民団愛媛県地方本部
団 長 金 容 徳
21世紀を担う子ども達の健やかな成長を願い、日々研鑽とご努力を重ねておられる愛媛県教育委員会、吉野内直光教育長(井関和彦教育委員長)をはじめとします担当各位の皆様方に心から敬意を表させていただきます。我が国の解放と独立を祝す第57周年光復節記念式にあたり、愛媛県に居住する私たちは、改めて、愛媛県教育委員会の中高一貫校の設立における歴史教科書の採択に深い懸念と憂慮を表明し、再検討を要望するものであります。
私たち在日韓国人は、日本のアジア侵略、とりわけ我が国を植民地支配した結果、日本に居住するに至った当事者とその子孫であります。祖国解放後、在日本大韓民国民団を結成し、今日までの活動の多くを植民地史観の克服と在日同胞の権益擁護運動に努めて来たと申し上げても過言ではありません。徴兵・徴用や強制連行による犠牲者、関東大震災時の虐殺事件など、隠蔽された歴史的事実を明らかにする努力や創氏改名によって使用するにいたった日本名から民俗名の回復など、植民地時代の残滓の克服に努めてまいりました。そして、このような不幸な歴史を克服するためには、韓日・日韓の相互理解が何よりも重要であるという立場から市民レベルの友好親善活動に力を注いで参りました。
今日、良識ある多くの日本人や関係諸団体のご支援を得て、努力してきました結果、韓日間の事実にもとづいた歴史認識も高まり、韓日・日韓の相互理解が増進し、差別事例の多くが克服されて来たことは周知の事実であります。
特に1994年に国際連合で採択されました「国連人権教育10カ年計画」により日本国内閣総理大臣を本部長に、そして文部科学大臣が副本部長となり、差別事象の撤廃と国際理解教育を積極的に進められておられることや、この度、大成功裏の内に幕を閉じた韓日で共同開催された2002年ワールドカップ大会により、かつてないほど韓日両国民間の友好ムードが高まっております。
日本の公教育の場に子弟の教育をゆだねている私どもの立場から、私たちの子供たちが自分自身の民族的アイデンティティを大切にし、民族差別と偏見に負けずに成長することを願い次のように要望いたします。
@1982年いわゆる教科書検定問題をきっかけに「近隣諸国条項」が設けられた経緯と趣旨をふまえた教材が採用されるよう重ねてお願い申し上げます。戦争と革命の世紀と称されている20世紀の悲惨な歴史の要因のひとつが自国・自民族至上主義の歴史観に求められます。旧日本帝国主義時代におけるアジア諸国に対する侵略の事実を隠蔽、あるいは正当化するような記述は、時代に逆行するものと考えます。インターナショナル時代からグローバルな地球時代に対応する次世代の育成に求められるのは相互理解と尊重の精神だと思います。このような精神は過去の歴史を正しく理解することから始まるものと思います。
A国連人権教育10カ年計画」がめざす教材が採用されるようご理解、ご協力をお願いいたします。すでに8年目を迎えました国連人権教育計画は、日本全国で大きな成果をあげており、民族的偏見と差別の体験者であります在日韓国・朝鮮人の保護者にとりまして、大きな喜びであります。愛媛県におかれましても、いま進めておられる人権教育の精神が具体的に反映され、多民族・多文化共生社会をめざす立場からの教材が採択されるよう心から要望いたします。
Bいわゆる「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書が採択されることのないよう重ねて要望いたします。検定過程で大幅に修正指導をされ、検定後も他に例を見ない程の多数カ所の訂正をし、荒唐無稽な歪曲史実をあたかも事実のように取り上げ、日本でしか通用しない内容もさることながら、その意図するところ、戦前に復古するかの印象を与えている「つくる会」教科書は、アジア諸国をはじめ、ひいては世界の国々にも新たな誤解と偏見を生み出す要因となります。ましてや、今後、国際人として未来を担う子ども達がこのような教科書を用いて学ぶことに、薄ら寒さすら覚えます。
21世紀におきまして日本は、アジアは勿論世界の中で主導的な役割を期待されております。自国民・自民族至上主義に偏った教科書は決してプラスとはならないと思います。少なくとも北東アジアに於きまして、互いの理解を深めあうために歴史教科書の共同研究が始まっていることなどを踏まえ、前述しました私どもの要望を斟酌され、貴愛媛県教育委員会のご賢明なるご判断を切に要望いたします。