愛媛の教科書問題 > 愛媛の教科書問題(1) 2001/08/08〜2002/08/14

◆扶桑社版歴史教科書/採択違憲と知事ら提訴◆


…外国籍教員や保護者ら117人「政治が教育介入」…

 「新しい歴史教科書をつくる会」主導による中学歴史教科書(扶桑社版)の県立ろう・養護学校の一部での使用採択は、加戸守行知事の発言が強く影響しており、政治権力の教育への介入を禁じた教育基本法に反し、在日外国人の基本的人権が脅かされ違憲などとして、県内の就学予定児童の保護者や中国・韓国籍の教員ら計117人が10日、知事と当時の県教育委員6人を相手に、各原告に1000円の支払いを求める損害賠償訴訟を松山地裁に起こした。

 原告団の内訳は▼県内67人▼県外32人▼在日韓国6人▼同中国1人▼韓国在住11人。

 訴えによると、加戸知事は、昨年7月の採択前に開かれた県幹部会議で「扶桑社の教科書がベストだろう」などと発言し、教育行政に不当介入。知事の意向を受けた県教育委員らは採択に当たり、約30分の形式的に扶桑社版に決めた、としている。

 原告団は「公教育の場で、戦争を賛美するような歴史教科書が使われ、思想の自由や個人の尊厳が激しく脅かされた。韓国・中国籍の原告は日本が同じ過ち(戦争)を繰り返すのではないかと、強い不安と恐怖感を抱いている」と主張した。

 会見した原告で「日本の教科書を正す運動本部」(ソウル)政策局長、張信さん(33)は「韓国でも強い反発がある。日本を敵対視するのではなく、アジアと世界平和のため、誤った歴史認識をただしたい」。高井弘之さん(47)=今治市=は「文部省(当時)出身で教科書行政にも精通した加戸知事は、確信的に教育基本法と憲法に背いており、一層悪質。採択への不当介入を司法の場で明らかにする」と強い口調で訴えた。

 会見後、原告ら6人が県教委教育総務課を訪れ、張さんが「愛媛県は韓国と中国との関係を冷静に考え、教科書を採択してほしい」と要請した。

●加戸守行知事
 訴状の内容は把握していないが、教科書採択は教育委員会の権限と責任で適正に行われたものであると考えている。

●吉野内直光教育長
 訴状の内容は把握していないが、教科書採択は教育委員会が適正に行ったものである。

●推進派
 県教委の歴史教科書採択に関し、扶桑社版採択に反対する市民らが加戸守行知事と当時の県教育委員を提訴したことに対し、同社版採択推進派の県教科書改善連絡協議会(宮川康会長)は10日、「訴訟制度を乱用した教科書採択への不当介入に屈することのない、県教委の毅然たる姿勢を求める」声明を発表した。

 声明では、提訴した原告団が司法制度を特定の政治目的の宣伝のために悪用している」とし、同問題に関する知事発言は「教育の不当な支配に当たる」との原告団の主張に対して「選挙で選ばれた知事が教育に一定の見識を持ち、教科書について感想を話したとしても何ら『不当な支配』には当たらない」などと反論している。

(2002/07/11 『愛媛新聞』より)