

愛媛の教科書問題 > 愛媛の教科書問題(1) 2001/08/08〜2002/08/14
◆歴史教科書問題第2幕/中高一貫校の採択焦点/論議再燃◆
昨夏、県教育委員会が「新らしい歴史教科書をつくる会」主導の中学歴史教科書(扶桑社版)を県立ろう・養護学校の一部で採択し、大論争となって。今年も、来春開設の県立中高一貫校での採択が論議を呼ぶのは必至の情勢で、5月には加戸守行知事が西条市での講演で「教科書問題は県政最大の課題」と発言。それに対する反発も巻き起こるなど、採択時期の8月に向けて推進、反対両派の運動が活発化してきた。
今年は中高一貫校に加え、県立高校の歴史教科書の採択も問題になりそうだ。扶桑社版と同様の批判を受けた明成社(東京)の「日本史B」が今春、検定を通過したからだ。同教科書は、1986年の検定で中韓両国から批判された原書房(東京)の「新編日本史」の流れをくむだけに、行方が注目される。
県教委高校教育課によると、県立学校の教科書採択システムはこうだ。県教委が各学校から希望する教科書を聴取、校長や教員などで構成する全県組織「教科書採択委員会」の調査や審議を参考に、8月に県教委が採択するという手順。県立学校の中学教科書は4年に一度、高校教科書は毎年、学年ごとに採択作業をしている。
昨年来、扶桑社版教科書の採択推進運動にかかわってきた日本会議県支部の長曽我部延昭支部長は「今年は一貫校で扶桑社版、県立高校で明成社版の歴史教科書を推進したい」と言明。特に一貫校に関しては、昨年の採択に携わった県教育委員5人のうち、4人が残っていることから「わずか1年で異なる答えがでるとは考えにくい」と楽観的な見通しさえ示す。
さらに推進派の”援軍”になっているのが加戸知事の言動。以前から扶桑社版教科書への強い思いを明言していたが、5月の講演で、昨年の採択を評価した上で、歴史教科書採択について「外国の批判で取り下げるようでは、主権国家と言えない」などと発言した。
長曽我部支部長は「知事は旧文部省出身で、愛媛で一番教科書問題を熟知している人物」と擁護。知事の対応を積極評価する署名活動や、各学校長らへの働き掛けなどで世論を喚起したい考えだ。
こうした動きに対し、反対派は危機感を強める。扶桑社版、明成社版の採択阻止に向け、教育問題の専門家を招いた講演会やシンポジウムを毎週のように開くなど活動を活発化させている。
ことに一連の知事発言への反発は激しい。知事に質問状を提出した教科書採択問題連絡会事務局の和田宰さんは(西条市での)知事発言を採択の圧力と考えるのはきわめて自然」と強く批判する。
知事らを相手に「違憲・違法確認と精神的苦痛による慰謝料請求訴訟」を準備中のえひめ教科書裁判原告団は、有事関連法案を評価した知事の姿勢と辛目、「知事を民主主義と平和主義の名において裁かねばならない」とのアピールを発表し、知事の言動を公の場で追求する構えだ。
採択を取り巻く状況は予断を許さない状況になってきたが、双方の歴史観、戦争観の違いもあり、内容の議論を含め主張は平行線だ。
ただ、昨年の採択騒動で「愛媛の教育」が全国的に”突出”した印象を与え、学校現場まで注目されるようになったのは事実。子どもたちに静かで落ち着いた教育環境を提供するのが教育行政の責務のはず。採択にあたって、そうした視点での論議が抜け落ちてはなるまい。
(2002/06/10/愛媛新聞/ずうむin愛媛)