愛媛の教科書問題 > 愛媛の教科書問題(1) 2001/08/08〜2002/08/14

◆弱者「突破口」ひきょう/学校現場一斉に反発/利用に怒り指導に不安◆


「ひきょうだ。こそくな手段だ」「社会的弱者を狙い撃ちにしている」。県教育委員会が8日、2002年度から県立養護学校の一部で扶桑社の中学校歴史教科書使用を決めたことに対し、とまどいつつも学校の指導に信用の声を寄せる保護者がいる一方、親や障害者、教育現場からは一斉に批判の声が上がった。「なぜ養護学校だけに」との疑問には、「今回を突破口に一般校への拡大を」とのシナリオも透けて見える。当事者からの反発に、教育委員会の「学習指導要領に最も沿った教科書」との説得力も色あせた。

 新年度から同教科書が使用される松山聾学校のPTA役員は驚きながらも、「先生を信頼しているので、教科書のいいところを上手に使ってもらえるものと思っており、心配していない」と指導の充実を要望。中学進学を控えた障害児を持つ今治市の母親は「問題が多く指摘されている教科書を養護学校でだけ使うのは、親としてよくないような気がする」と釈然としない気持ちを隠さず、「どこからか圧力があったのか、採択の本当の理由が知りたい」と求めた。

 県教委から「格段の工夫と努力」を求められた格好の聾学校教員は「太平洋戦争を正義の戦争だと県教委が認めた教科書を使うことに、教師として抵抗がある。政治的に利用されていると感じる」と反対を表明。元養護学校教員も「障害児は一人ひとり学力や発達度合いが大きく異なり、あえて難しい教科書を使うのは、生姜自供委区への無知を示している」と教育委員の判断に疑問を呈し、「養護学校だと子供も保護者も少なく、抵抗が小さいと判断したのではないか」と採択決定の背景を推測した。

 教員組合も「障害児の教育充実を怠っておいて、こういう教科書だけを押しつけるのは、障害児教育の破壊だ。撤回を求める」(全教加盟の県教組)「戦争を美化し、人権を抑圧している教科書を使用させることは、子供にさらなる苦痛を与え、許されない」(日教組加盟の愛媛教組)などとのコメントを出した。

 障害者の自立支援センター(松山市)の中村久光代表は「養護学校という隔離された状況で、情報もなく、戦争を賛美したような教科書で教えるのは洗脳教育だ」と批判。「採択の実績を作って、だんだん広げようと言う意図が明らかに見え、本当にひきょう。障害者差別にもつながる」と憤った。

(2001/08/08 『愛媛新聞』より)