愛媛の教科書問題 > 愛媛の教科書問題(1) 2001/08/08〜2002/08/14

◆「つくる会」歴史教科書/県教委も採択/委員6人が全会一致◆


 県教育委員会(土居俊夫委員長、6人)は8日、定例会を開き、「新しい歴史教科書をつくる会」主導の中学歴史、公民の教科書(扶桑社刊)を来年度から県立養護学校の一部で使用することを全会一致で決めた。公立学校で扶桑社の教科書を採択したのは、東京都が養護学校の一部で採択したのに次いで2例目。

 これに対し、扶桑社の教科書採択に反対している県内の市民団体などから抗議や批判、撤回要求などが相次いだ。

 採用するのは養護学校13校(分校を含む)のうち、▼ろう学校2校(松山ろう、宇和ろう)▼肢体不自由2校(第一養護、整枝療護園分校)▼病弱1校(第二養護)…の計5校(うち分校1校)対象は来年度入学生で、5校合わせて5人の予定。点字教科書を用いる盲学校や、より平易な教科書を使う知的障害の学校では採用しなかった。

 採択の理由について、定例会終了後に会見した土居委員長は「学習指導要領の教育目標に最も沿った教科書だと判断した」と説明。教育委員の吉野内直光教育長は「神話や人物を多く取り上げており、日本の歴史に対する興味、関心を高め、歴史に対して愛情を深めさせようとする工夫がみられる」と述べた。

 一方、扶桑社の教科書に反対する市民団体「新しい教科書と教育を考える市民ネットワークえひめ」の高井弘之さんは「養護学校の生徒のことを考えず、政治目的に生徒を利用したと思われる。なぜ、養護学校なのか疑問で、大きな差別と感じている」と批判した。

 市町村立の中学校の教科書は各自治体の教委が決定するのに対し、県立盲・ろう・養護学校の中学部の教科書は県教委に直接の採択権がある。5教育事務所単位の市町村教委で構成する「教科用図書採択地区協議会」では、すべて扶桑社以外の歴史教科書を採択している。

  ▼加戸守行県知事の話▼
 文部科学省の検定済み教科書のどれを採択するかは、教育委員会の権限であり、今回、扶桑社発行の教科書を採択されたことは、教育委員の見識であり高く評価する。

  ▼土居俊夫(南海放送社長)委員長の話▼
 学習指導要領で「わが国の文化と伝統の特色を広い視野に立って考えさせるとともに、わが国の歴史に対する愛情を深め、国民としての自覚を育てる」と教育目標が定められている。この目標に最も沿った教科書であると判断した。体に障害を持つ子供たちのための授業だから、授業のあり方には、格段の工夫、努力が必要だろうとの意見があった。

  ▼井関和彦委員長職務代行者(伊予木材社長、大洲商工会議所会頭の話▼
  歴史を学ぶのは過去の事実を知るだけではなく、過去の事実に対して過去の人々がどう考えたかを学ぶことも大事と思っている。扶桑社の本はそういう意味で比較的多面的、多角的な捉え方をしていて良いと考えている。

  ▼川本俊明委員(松山大学経済学部教授、元高校長)▼
 扶桑社の歴史教科書をみていると、最初に「歴史を学ぶとは」、最後に「歴史を学んで」というのがあり、この2つのねらいが内容などに表れている。よって、この教科書を利用して生徒が学習することは適当であると判断した。

  ▼星川一冶委員(丸住製紙社長、川之江商工会議所会頭)▼
 指導要領にいかに沿っているかに、特に注意を払った。そういう中で、扶桑社の教科書がただしく沿っていた。指導要領でわが国の歴史に対する愛情を深め、国民にとしての自覚を育てるということが目標になっているが、そういうことがこれからの教育に大変大事と考えている。

  ▼飯尾育子委員(隣保館館長、元小学校長)▼
 委員長、教育庁の話と同様、一番ふさわしいのではないかと判断した。

  ▼吉野内直光委員(県教育長)▼
 扶桑社の教科書の特徴の一つは、日本語の起源や神話、仏教美術などに関して、日本には日本の独特の文化がある。それは先人の知恵と努力、豊かな風土のたまものであるといった内容が一貫している点。もう一点は、非常に多くの人物をコラム形式で取り上げ、人物学習を通じて、日本の歴史に対する興味や関心を高める。そして、歴史に対する愛情を深めさせようとする工夫がみられる。

(2001/08/09/『愛媛新聞』より)